会長挨拶

司法書士は、法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与します。

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1.相続登記の申請義務化への対応
 いよいよ、令和6年4月1日より、相続登記の申請が義務化されることとなります。
 これまで「任意」であった相続登記が、社会問題である空き家・所有者不明土地問題の解決のために、「義務」に大転換されることとなります。
 この大きな変革につき、登記の専門家として、市民の皆様に対し、適切なアドバイスを行い、代理人としてその申請をサポートすることが求められています。
 まだまだ途上ともいえる周知活動や、市民の皆様の相談先である地方自治体等との連携を強化し、法務省・国土交通省や法務局等とともに、誰一人取り残さないという観点から、司法書士の使命を十全に果たしていきたいと考えています。

2.司法・行政のデジタル化への対応
 「人口減少」「少子高齢化」や国際的な経済競争力を背景に強力に推進されているデジタル化及びDX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応は、まさに司法書士制度そのものの有益性を左右する最重要課題の一つであると考えます。
 デジタル原則の時代に、真正担保機能を向上させ、かつ、手続の円滑と利便性を備える登記制度の構築を促進し、民事裁判や家事事件・倒産事件等の各種手続や公正証書作成手続のIT化については、当事者のサポート役として、利用者が等しくそのメリットを享受できるようなサポート体制を準備していきたいと考えています。

3.市民の権利擁護事業の拡充
 新型コロナウイルス感染症に伴う生活福祉金である緊急小口資金や総合支援資金等の返済が始まっています。住民税が非課税の世帯などは返済が免除されますが、免除の対象者以外からは、再就職や収入の回復が難しく返済が見通せないといった相談が多く寄せられており、債務者の生活をどう再建するのかが法律家としての課題となります。
 これまで、司法書士は、多重債務者の生活再建支援を継続してまいりました。その知見を活かし、経済的困窮者の権利擁護活動を強化していくことが求められます。
 子どもや高齢者、障がい者、セクシュアル・マイノリティの方々の権利擁護事業や自死問題への対応も、促進してまいります。

4.変わる法制度(担保法制・区分所有法制・成年後見制度等)への対応
 令和3年2月10日、法制審議会担保法制部会が設置されました。
 令和4年9月12日、法制審議会区分所有法制部会が設置されました。
 また、法制審議会家族法制部会においては、令和4年11月には中間試案が取りまとめられています。
 そして、令和4年3月25日、今後5年間に政府が講ずる成年後見制度利用促進策の基本的な計画である「第二期成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定され、施策の大きな柱として、「成年後見制度の見直しに向けた検討を行う」ことが盛り込まれました。これを受けて、成年後見制度の在り方について指摘されている様々な論点についての検討・整理を行うことを目的として、「成年後見制度の在り方に関する研究会」が立ち上げられました。
 これらの法改正に関しても、変革の時代を支える法律家として、十全に対応してまいります。

5.150周年の節目の後に
 司法書士制度は、令和4年8月3日に150周年を迎えました。司法書士の歴史は、変容する国民の法的需要に真摯に応えてきたことによって積み重ねられてきました。
 さらなる150年に向けて、不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託支援といった様々な分野において、これまで以上に社会の期待に応えることのできる法律家団体を目指すため、全国の司法書士が使命を自覚しつつ職責を十全に果たし、倫理の涵養を図り、執務レベルを向上させるための研鑽を積むことができるような体制を強化することをここに宣言いたします。

日本司法書士会連合会 会長

小澤 吉徳